
Greeting会長ご挨拶
「品質を強みとして世界に通用する日本発のAIエコシステムを支える業界団体を構築する。」というのが我々の悲願です。
ディープラーニング、さらには大規模基盤モデルを用いた生成AIの登場により、AIは我々にとって身近なものとなりました。専門知識が必要なプログラミングなしで、プロンプトにより多様なAI機能を活用できます。AIエージェントが発展すれば、ネットでの旅行の予約やバンキング、証券取引をAIに任せることすら可能です。便利になる一方で、社会システムに重大な影響を及ぼすことが懸念されます。AIの急速な発達と普及を受けて、ISO/IEC42000シリーズではAIマネジメント規格を制定し、欧州ではAI法が発効し、米国ではNISTがAI Risk Management Frameworkを開発し、さらには日本を含む各国でAI Safety Institute (AISI) が設立され、国際AISIネットワークとして連携が進むなど、AIビジネスをとりまく環境は世界中で激しく急速な動きを見せています。
このような状況の中で、AIビジネスをグローバル競争の中で遂行していくことは容易ではありません。急激に変化する世界の法制度や規制、ガイドラインや新技術などに対応して、事業体制や社内プロセスを整備し、グローバル競争力を確保するには大量のリソースが必要で、中小企業だけでなく大企業にとっても非常に困難です。製造やヘルスケア、スマートシティーなどAIの高度な活用により業態が大きく変化していく中で我が国の産業競争力を維持、強化していくためには、競争領域と協調領域を明確にして、協調領域について国を挙げて企業間の協力体制を築いていくことがたいへん重要です。
AI品質マネジメントイニシアティブ(AI Quality Management Initiative, AIQMI)はこのような状況の中で、参加企業が自らの強みにリソースを集中し、切磋琢磨し、協調領域については協調により力を合わせて課題解決を図るエコシステムの構築を支援する目的で設立しました。毎日のように紙面やインターネットを賑わす関連情報を収集、咀嚼し、AI事業遂行において直面する品質マネジメントの課題を解決し、参加企業がそれぞれの競争力を相互補完してグローバルAI事業における種々のリスクを連携して乗り越えるためのエコシステムの構築を支援します。
最初の数年間、本イニシアティブの活動が軌道に乗り、国内外で広く認知されるまでは、産総研が総力を挙げてバックアップできるように、産総研コンソーシアムの形態を採用することとしました。産総研が2018年から行ってきた「機械学習品質マネジメントガイドライン」などの研究成果や、ISO/IEC/JTC1/SC42などの国際標準化活動の成果をフルに活用して冒頭に掲げた悲願達成に向けて尽力してまいります。
ただ、この悲願達成を行う主体は、あくまでも参加企業の皆様です。当面の間、参加費無償で運営いたしますので、幅広い皆様のご参加をお願いいたします。
2025年2月
妹尾 義樹